深海一辺倒

ままならない生活

FINCAさんで推し香水を作ったレポ

香水ショップに行こう!

推しのグッズ・同人誌が出なくなってはや〇ヶ月……いや〇年……。

月日が流れようとも、まだ新鮮に私は推しと推しカプのことが好きだが、”無”を見つめながらろくろを回すのも段々寂しくなってきた頃合だ。

推しカプ二次創作の頻度も落ち、推しの公式肖像画を見ながら、

「こんなに魅力的なのに、どうして供給がないんだろう……なぜオタクが少ないんだろう……」

と出るはずもない推しグッズや推しアンソロを夢見て呟く日々。

その中でぽつりと出たのが、「推しの香水が欲しい」だった。タイムラインでも話題になっているのを見かけたし、他ジャンルの友人が公式でキャラ香水が出た時に喜び狂っているのを見ていたため、漠然とした憧れがあったのだ。

私の推しは、いかにも香水をつけていてもおかしくないキャラクターだったため、尚の事「あったらいいのにな~~~」と思っていた。

そこへ飛んできたリプライ。

「一緒に……推し香水、作りに行きませんか!?」

それは、推し香水作成の経験者である天才のフォロワーだった。

ありがたいお声がけによって背中を押された私は、とにもかくにも推しの香水作りに挑むこととなった。冬の足音が聞こえ始めた頃であった。

推し香水を作ろう!

推し香水を作るために必要なことは2つ。

・どのお店で香水を作るか

・どんなオーダーで推しを伝えるか

である。

お店に関しては、本当に昨今色々なお店がイメージ香水を扱ってくれているので、選択肢も多いのだが、今回はフォロワーさんが行ったことのある新宿のお店にした。FINCAさんだ。

kaoribarfinca.jp

なんでも、こちらが記入したインタビューシート(推しがどんなイメージかを伝える用紙)を元に、調香師さんがいい感じの香りを探してくれるらしい。

インタビューシートは現地で30分程度かけて記入してもよいのだが、私はその場で溜まりに溜まった推し語りをまとめる自信がなかったので、事前にPDFをダウンロードして書き込んだものを持参した。

今回持ち込んだインタビューシートはこんな感じ。A4の用紙にみっちりと愛と解釈を書き込んだ。途中、打ち込んだ文章を全消去してしまう痛恨のミスがあったため、実質2回目の記入である。

男性。年齢は40~50代くらい。大企業の社長を務めています。モチーフは「薔薇」で、イメージカラーは薔薇の真紅と明るいグリーン、高級スーツのグレーです。
特徴としては、父性母性を併せ持っていることが挙げられます。

父性6:母性4くらいです。

 

(父性)
・地位や財力、カリスマ性を生かし、ワンマン体制で大企業をまとめあげています。
才能のある人間を見出し、才のない人間は容赦なく切り捨てる、厳格な実力主義の持ち主です。自分の行動にも迷うところがなく、常に未来を見据えて行動しています。
・自分の目的のためなら強硬策も厭わず、他者の理解も求めないところがあります。
(母性)
・誰に対しても優しく朗らかで、孤児院の子供にも手を差し伸べるなど、慈善事業にも積極的です。ふくよかな体型やたれ目の目元は愛嬌があり、人々からも広く親しまれています。
・持ち前の財力と即断即決ぶりから、他人に惜しみなく様々なプレゼントを与えてくれます。
プレゼントを受け取った人間は、彼に心酔してしまうことが多いです。
・誰かに好意を向けられても、曖昧な笑みで平等に慈愛を持って接してくれます。

 

一人の子供の運命を魔法のように一変させてしまう、蠱惑的で官能的な、憧れの大人です。

これ……調香師さんに見せるの、恥ずかしくないか……??

オタク、推しの自解釈を好きに語っていいぞ! って言われると、嬉しくて数時間を溶かしてしまう生き物。

でも既にお店の予約は取っちゃったし、そもそもインタビューシート自体に「香りのイメージをご記入ください(性格・特徴・好きなところ・モチーフetcなど)」って書いてあるんだから、私はそれに従ったに過ぎない……そういうことにしておこう……。

何度も推敲した推し解釈を手に、いざお店へ!

推し香水を嗅ごう!

お店に着き、予約の旨を伝えると、いい香りの漂う店内へと案内される。

今回は2人での来店だったが、イメージ香水作りは店員さんとのタイマンである。フォロワーにしばしの別れを告げ、面倒見が良さそうな店員さんと対面する。対戦よろしくお願いします。

インタビューシートを渡して、推し香水作りスタート!

……真剣にインタビューシートを読む店員さん。自分の書いた文がキモくないか心配になる。

その後、「モチーフが薔薇だが、実際に薔薇の香りが含まれる方がいいか」「苦手な香りが含まれる組み合わせも試して大丈夫か」などの質問に答えると、本格的推し香水作りに突入する。

FINCAさんは『2種類の香水をパイルアップ(重ね付け)することで1つのイメージを作る』という調香スタイルを取っており、その時も実際に2種の香水を重ね付けした紙を3パターンほど用意してもらった。

香りの説明を聞きながら、マスクから鼻だけ出し、恐る恐る紙を嗅いでみる。普段香水に縁もゆかりもない私は、まずブワッと何かしらの香りがするってだけでスゲ~となっていた。

その中でも1つ目は渋~い感じで、ちょっとワイルド過ぎる気がした。

一方で2つ目、3つ目はダンディでありつつも比較的やわらかい香りで、こちらの方が推しに近い感じがする。(なんとなく……)

その旨を伝えると、次は後者で使った香りを軸に、もう何パターンか別の香水を重ね付けしたものを渡してくれるので、これを嗅ぎ比べる。基本的にはこの繰り返しで、『より推しっぽい方』を選んで香りを作っていく。

「これはダンディさを強めにしてみました」「こっちはもう少し女性的な雰囲気で」など、調香師さんが色々な方向性で香りサンプルを出してくれる……。もうそれだけで楽しい……。

数回やり取りをすると、これ推しっぽいな~と思える甘い香りがあったので、それをベースに調香してもらうことに。

すると、次に渡されたテスターで突然、

「え!!?????? 推し、居る!!???????」

となった。

それまでぼんやりと「推しっぽいかな~」くらいに思っていた香りが、急に『推し』になった。マジ。

「これ凄い推しっぽいです!!!!!!!!!!!」と興奮気味に言うと、もう少し父性(または母性)を前面に出したバージョンと比べさせてくれることに。

ここまで来ると、何度も香水を嗅ぎ比べしたことで鼻がバカになってきていたので、一度テスターを持って店外へ出て行き、外の空気の中で推し香水を嗅ぐ。

いや……でもやっぱこれ……『推し』だわ……。エッ……? 居る……理想の推しが……推しってこんな香りなんだ……。(?)

脳内が感動と「?」でいっぱいになる。鼻から吸う推しに、推しの甘い香りに、あたたかく甘い中にも不思議とダンディさがあり、しかし全然おっさんぽくはなくて、ずっと嗅いでいたい抱擁感と、人をダメにするチャームが……鼻から……。

店外でちっちゃい紙を必死に嗅ぎながら、思わずハァハァと口呼吸する不審者になってしまったが、周りにも2人くらい同じようなお姉さんがいたからセーフでした。

そういえば、店内は女性のお客さんが圧倒的に多いのに、聞こえてくる単語は、全部「彼のイメージは~~」だったな……。皆、推しを求めてここに……(その気持ち、今なら痛いほどわかるよ……)

その後、それ以上に『推し』である香りが見当たらなかったので、ファイナルアンサーをして香水作りは終了。

最後に選んだ香水の説明と、撮影タイムを経てお会計に。これだけしてもらって5000円で……いいんすか!?

推し香水

今回購入した香水は、推しの父性を表すオヴェルタ(スモーキーで甘い香りがする)と、母性を表すサンダルウッド(万人受けしそうな落ち着く香り)でした。

「ぼ、母性→父性の順に香ってほしいです……」というキモオタの願いを反映し、オヴェルタを先に1プッシュしてから、サンダルウッドを上から2プッシュすると良いですよ~! との指南付きだ。1プッシュでも強く香る父性が甘くスモーキーに漂い、そこへ同じくウッド系の母性が穏やかさと嗅ぎやすさを出してくれている……気がする!!

店員さんの受け売りと私の妄想です。ウッドとかスモーキーみたいな香りの分類なんて初めて聞いたから、使い方あってるのかは不明。

でも父性のオヴェルタが甘さを含んでるの犯罪だろと思ったし、サンダルウッドはFINCAさんの公式通販で(香水制作時~今も)一番の人気を誇っていたので、親しみやすさも抜群ってことなんだと思います。最高……。

同じく調香を終えたフォロワーさんとキマった眼をしながら、推しカプを語りながらお茶をしばき、推し香水の嗅ぎ比べを経て……(同キャラのイメージで調香しているはずなのに、店員さんや己の解釈によって全然違う香りでビックリした)

その日は幸せに包まれ……眠った。香水を嗅ぎながら……。

推し概念アイテムを買っちゃおう!

いや眠れん!!!!!!!!!!!!!!!

それからゆうに二週間は、香水と推しのことで頭がいっぱいで悶えた。

マジでこれは私の鼻が逝ったのかもしれませんが、香水の香りがしなくなったな~というタイミングで外の空気を吸うと、突然鼻の奥にあの甘い香りがふわりと漂い、これが残り香………………ってコト!!!???????? と何もない空間で一人暴れることが多発した。

また、フォロワーさんから推しカプイメージのハンカチを頂いたこともブーストになり、私は思った。

「推しのハンカチを……買おう!!!!!!!!!!!」

すぐさま最寄りの百貨店に駆け込み、不慣れなメンズフロアを所在なさげに徘徊したのち、私はポール・スミスでちょっといいハンカチを買って帰った。香水作りからわずか1日のことであった。

推しハンカチ

推しのイメージカラーに合っており、ドットの色が推しが眺める街の夜景っぽいと思った。ドット柄は推しの私服コーデにも通ずるものがあるし、あとはイギリスのファッションブランドなのが良い。推しの懐なら、このくらいのハンカチは道端で転んだ子供相手にさっとあげちゃいそうだし……私が後生大事に持っていても許されるはず……(夢?)

購入時、あんだけ悩んでいたくせにギフト用でもなく自分用に購入したため、店員さんからは明らかに不審がられたと思うが、恥を忍んで店員さんの見送るフロアを後にした。手汗がヤバかった。

今もこのハンカチに香水をつけて嗅いでいる。これを顔に広げて寝ると死人になります。鼻に押し当てるよりは、鼻の前でちょっとはためかせる方が、いい感じに……まろやかな香りがして……最高だ……。

今回の推し香水は、どちらかというとプッシュしてから15分くらいすると甘さが出てきて長く香るタイプだったので、忘れた頃にハンカチを嗅いでもうっとりできます。

こんなの好きになってしまう……。

明らかに推しと推しカプの解釈強度が上がった夜であった。

推し香水をシェアしよう!

FINCAさんで香水を買う際、「今回の推し香水と推しキャラ本人を並べて紹介することは控えてね(あくまでも非公式イメージ香水なので)」と伺っていたので、この記事でも推しの名前は出さないのだが、通じる人にはこの香りを配りまくった。

メッセージカードに吹き付けて、推しカプの同人誌に「推しイメージの香水です! もし良ければ一緒に楽しんでください!」と添えて渡すことで、急にシェアハピした気分に……なる!

これはあくまでも私の推し解釈による香りなので、自分の二次創作にも近いのだが、しかしそこはやはり『プロの調香師さんに選んでもらった』という点が、人にも渡しやすいポイントである。

私の解釈たっぷりだけど私だけの作品じゃない、いうなればこれは第三者との合同誌みたいなものなので、ゲストの方の最高作品を紹介するノリで自解釈もついでに渡せる。

それに香りという一時的でふんわりしたものなので、最悪鼻に合わなかったとしても、紙を処分すれば済む。そのうち消えるので収納スペースなどを圧迫することもない。

しかも嗅いでくれた方から香りの感想を聞くと、まるで自解釈を褒めてもらってるみたいでHAPPY……になる。いいことしかない。

 

最後に

ここまで読んでくれて、推し香水を作ろうか迷ってるオタク~!

推しへの情熱と飢えがあるなら……推し香水、作っちゃお~~~!!!!!!

推しは熱い内に推せば推すだけ楽しめるから!!!!! これマジ!!!!!!!!!!

推しへの情熱も物欲も創作欲求も、いつまでもあると思うな~ってヤツだものね……。

皆さんも推し香水でよき推しライフを~! 推しは居ますよ~!!♡

今夜書きたい同人感想文

まえがき

イラスト、小説、二次創作など……この世にはたくさんの創作物があふれています。
その中には、
「この作品マジ最高……😭😭この作品を生み出してくださったことに……感謝🙏」
と思わされるような、心に残る神作品が流れてくることもあることでしょう。

ところが、そんな作品のリプ欄に

「好みの画像だったんで保存した さらばだ……」と抜かす画質の悪いドラゴンとか……
誰かが配布した「RTとふぁぼをバシバシ押すキャラクターのgif」とかが貼られてたら……

ムカつきませんか!?

だってこれらのリプライ、隙あらば自語りしてる上に語彙力も何にもない反応じゃないですか。
こんなリプライ奴よりも、自分の方がこの作品の良さを分かってる……!!!!!
そう思いませんか!?

でも……実は……

そんなROM専よりも、リプライ貼り付け奴の方が作者さんにとっては嬉しいかもしれないんです!

だって、とにかく「あなたの作品良かったよ」という気持ちを目に見える形で貼りつけてくれた訳ですから、無言の1ブクマより「嬉しい」と感じられてもおかしくありません。

あるいは、そんなリプが一件もなく数千RTされる作品を見て、

素晴らしい……。
これだけ伸びてるんだから、この作者さんはきっとめちゃくちゃ褒められてるに違いない……。

と思って、自分もふぁぼ(+RTしたりRT後感想を呟いたり)だけすること……ありませんか?

でも……実は……

作者の下に届く感想って、読者が想像するよりもずーーーっと少ないんです!!

数千RTされたとしても、感想が1件も来ないこととかあります。多分。(そんなに伸びたことないから分からん)
でも、神作家さんの匿名感想返信フォームの回答頻度なんかを見ていると、素晴らしい作品1件につき、10件も20件も感想をもらっているようではないみたいです。
匿名フォームやリクエスト受付を積極的に公開してる方なんかは、もっと気さくに感想を貰っている場合もありますが、そうでない作家さんも多いですよね。
あなたの大好きな作品を書いてくれた作家さんも、思いのほか感想を貰っていないかもしれません。

そんなの悲しいし、そこであなたの感じた「この作品……最高!!!!!」の気持ちを闇に葬ってしまうなんて、あまりにも勿体ない。

そんな時! ただのROM専から一歩踏み出してみませんか?

そう、感想を送りましょう!!

大丈夫、感想って意外と簡単に書けます!
しかも、その感想は匿名感想フォームなどから、簡単に送れます。

あなたも感想を……送ってみませんか!?

目指すは感想帝、「私が感想を送ることで喜ばぬ作家はいなかった……」くらいの気持ちでいきましょう!

感想、何から書けばいい?

まず迷うのがここです。
「良かったです」「最高でした!!!!!」だけでも感想としては成り立ちますが、もっと色々書き込んでみると、”素敵な作品に対する感想ファンレター”っぽくなります。
その方が送る側も「気持ちを伝えられたな」と思えるし、送られた側も「熱い感想をいただけて嬉しい!」と思う確率が上がるんじゃないでしょうか。

「最高」をもっと具体的に伝える手段を考えてみましょう。

特に良かった点

どんな些細な点でも大丈夫です。「ここ好き!」と思うポイントを書き出してみましょう。
例えば漫画なら、特に好きなコマやセリフ、表情、印象に残ったページ、作画など。
小説なら、好きな一文や印象的な表現などでしょうか。
一枚絵なら、ストレートに自分が好きな部分ですね。瞳とか手とか、小道具とか……。

あまり細かい点を書き連ねすぎても感想が長くなってしまいますが、基本的にはどんな細かい点でも褒められた側は嬉しいものです。
自分の作品を細かいところまでよく見てくれている、ということなので。

特に、「そこは自分でも特にこだわりました!」と作者さんが思っているポイントを褒めてもらえると、めちゃくちゃ嬉しくなります。HAPPY……👍

 例

  • 5ページ目の冒頭で、Aを見つめるBの表情が彼の揺れ動く内心をとてもよく表していて、素晴らしいと思いました。
  • Aの誕生日イラストで、背景の小物までAの好きなものがたくさん書き込まれている点に愛情を感じました。
  • 「じゃあ、行こうか」というセリフが、Aの包容力や数多くを語らない優しさを含んでおり、大変Aらしい一言だと思いました。
全体の雰囲気や作風

逆に、具体的なポイントよりも、お話そのものや作品の雰囲気が好きだ! という場合、そこを感想に書くことができます。

漫画・小説なら、話の流れ、そのシーンに漂う雰囲気、キャラクターの立ち振る舞いなど。
一枚絵なら、色使いや絵柄、背景などでしょうか。

 

  • 作品全体を通してAとBの心温まるやり取りが散りばめられており、どのやり取りを見ても思わず笑顔になれました。
  • 全体的にくすんだ色味でシャープにまとまっている中、Aの瞳にだけハイライトがあるのがとても美しく、目を惹かれました。
  • AとBの学生時代のシーンが何度かありましたが、そのどれもが高校生らしい青春の爽やかさを感じさせるもので、二人の懐かしい学生時代に思いを馳せることができました。
日頃の活動から

一件一件の作品も好きだけど、作者さんのSNSでの発言や、創作に対する熱意などまでひっくるめて好きだ!! という気持ちを伝えたい場合、ちょっと気をつけて書いていきましょう。

というのも、急に「○○さん愛してます❤️ 大好きです……❤️」というファンレターが来たらちょっと怖い……ですよね?
そうならないためにも、重すぎない程度に書く必要があります。

 

  • ○○さんの日頃のツイートで、よく励まされております。いつも元気をくださってありがとうございます。
  • ○○さんの更新が日々の楽しみです。陰ながら応援しております。
  • ○○さんのAに対する解釈が大好きで、特にAがいつも一貫して周囲への配慮を忘れない点が本当に最高です。

勘違いしてはいけないこと

避けた方がいい事柄

さて、ここまで色々と感想の書き方を見てきましたが、時には感想を送ったつもりが、作者の方を傷つけてしまうこともあります。
そんな「NGな感想」ってなんでしょうか?
少し考えてみましょう。

 

  • ○○さんの作品が一番好きです。××さんの絵の方がブクマされていますが、あちらよりも○○さんの作品の方がずっと良いと思います。
  • Aというキャラはあんパンよりも焼きそばパンの方が好きだと思いますが、あんパンが好きなAもアリだと思いました。
  • ○○さんの作品以外読めません。毎日更新がないかチェックしております。○○さんの作品が私の生きる糧になっています。
  • ところで冒頭のシーンですが、Aの利き手が逆になっていたことだけお伝えしたいです。それ以外ではきちんと右利きになっていたので……。

他の人をけなしてはいないでしょうか? 感想ではなく、自分の考えを押し付けてはいないでしょうか? 作者の方を崇拝してしまっていませんか? いらんアドバイスをしていないでしょうか?
ちょっとしたことですが、心に留めておくといいかもしれません。

感想は「見返り」を求めるものじゃない

これは感想の書き方ではなく、送り手としての心構えになります。

まず感想を送るという行為は、あくまでも「あの作品が素敵だったと一言伝えたい」という送り手側の自己満足であり、かつそんな作品を生み出してくれた相手への感謝を最大限に込めた行いです。
それを受け取った側がどう思うかは、送ってみるまで分かりません。

返事をくれないかもしれないし、時にはスルーされてしまうかもしれません。

しかし、そこで「せっかく頑張って感想を送ったのに、無視された!」と怒るのはお門違いです。
基本的に感想に対する返事は期待しないものですし、相手に認知されたい・気に入られたいから送る……という打算的な考えで書くものでもありません。

ただ、「あなたの作品が素敵だ」と伝えたいから送るのです。
徳を積むのと同じです。

頑張って感想を書いた自分へのご褒美は、自分でしてあげましょう。
例えば、

「感想を送ったぞ! 今日はいいことしたなあ~」

と自分を褒めてあげ、さっさと寝ましょう。
運が良ければ、次に目が覚めた時、作者の方からお返事が来ているかもしれません。

事故は起こるさ

自分では最大限褒めたつもりだったのに、相手がその言葉を卑屈に捉えて、機嫌を損ねてしまうパターンもあるにはあります。
また、「別に感想なんて欲しくない」という人に対して感想を送ったら、「なんか来て怖い」と思われたり……。

そこまではもう想定できません。こちらができることは、自分の文章が誤解を招かないものになっていないかチェックすることだけです。

また、匿名感想フォームを置いていない作家には感想を送らない、というのも一つの手でしょう。

しかし、全ての可能性に怯えていては、そもそも感想を送れません。
最大限に相手をリスペクトした上で、「どうか上手くいきますように……」と祈りながら、日々感想を送るしかないのです。

でも、多分ですが……感想を送ったら喜んでくれる方の方が多いと思いますよ! 元気出していきましょう。

終わりに

なんだか偉そうにあれこれ書き連ねてしまいましたが、とにかくこの記事で伝えたかったことは、

マジで感想は……送れ!!!!!!!!!!!!!

以上です。

お金を払って感想を得るサービスが存在するくらい、多くの作家さんは密かに感想を待っています。
大々的に「感想ください!!!!!」と言うのがはばかられるだけで、あなたの好きな作家さんも実は感想に飢えているかもしれません。

インターネット世界においては、「いつまでも あると思うな 推し作品」です。
あなたの好きな作家さんや作品がこれからも残り続けるように……また増えてくれるように……ちょっとだけでも感想を送ってみませんか?

最近は匿名感想フォームをはじめとする便利なツールも色々ありますから、試しに一度、書いてみてはいかがでしょうか。

以下、オススメのサイトも紹介しておきます。

感想自動作成フォーム

 

これで皆さんもレッツ感想執筆ライフ!

ありがとうございました。

 

男男関係性映画10本立て+α

 

BL要素のある映画を見たい!

腐オタたるもの、教養として先人の残した作品は履修しておきたいですよね。
でもどれを見たらいいかわからない、あるいは曖昧なあらすじしか知らない……。

じゃあ……全部見たらいいじゃない!!

ということで、有名どころの映画を一通り観てきました。
以下、映画の素養のない素人感想文です。ネタバレ含。

なお以下の作品は全てAmazonのレンタルで視聴可能です。
一部はAmazonプライムにも入っているので無料で見られちゃいます。

ブロークバック・マウンテン

マジで……良かった……!!!!!!
個人的には五本の指に入るお気に入り映画になりました。名作です。

まだ同性愛に否定的な思想が根強かった1960年代のアメリカで、男二人が添い遂げて生きることの難しさを描いた一作。

序盤は(人によっては)退屈なほど、青い空・白い雲・緑の山々・たくさんの羊たちが続きます。なんてのどかな風景なんだ……。
ここがタイトルにもなっているブロークバック・マウンテンです。
そこで牧場手伝いの季節労働者としてコンビを組むことになった主人公、イニスとジャック。

最初は気まずい雰囲気の二人ですが、大自然の中で徐々にその友情は育まれ、だんだんと近づく二人の距離……そしてある晩、二人は一線を超えてしまいます。
それでもお互い幸せで、その仲を邪魔する者は誰もいない。二人だけの世界、そこがブロークバック・マウンテンなのです。

しかし、山の外の現実は厳しい。

二人は「来年の夏も、またブロークバック・マウンテンで会おう」とそれとない約束を交わしますが、その約束は果たされることなく、二人の人生は別々の方向へ進んでいきます。

というのも、イニスは幼少期に『同性愛者の男性カップルが惨殺される』というショッキングな事件を目にしており、それ故にどうしても公の場で自分が同性愛者になることを受け入れられないのです。
イニスはジャックと別れたその年に、当時付き合っていた女性と結婚し、家庭を持つことになります。
一方のジャックも、イニスのことが忘れらないものの、資産家の娘である女性と結婚。

しかし、そうして家庭を育む傍らで、二人は熱心な文通を交わします。
文面こそ「今度釣りに行かないか」というものですが、その実態は肉体関係を伴う逢瀬。

実質浮気というか……家庭の方が社会的なうわべに過ぎないというか……。
しかし、そうでもしないとキスもできない二人。それぞれの家庭もうまくいかず、段々と物語に閉塞感が漂い始めます。

お互い思い合っているのに、逃避行するほどの踏ん切りはつかない。それでも相手を忘れられず、ただただ辛い恋です。

しかしある時、イニスが自分の気持ちと向き合うきっかけが訪れます。
それはジャックの身に起きた不幸で……。

エンディングまで二人の悲恋が胸を打つ一品です。泣いた。

 

余談ですが、この作品を見た海外腐ネキたちが原作者宛てにジャックハピエン二次創作を送りつけたところ、作者大激怒ですごい怒られが発生したという事件があります。
作者に二次創作を送るのは……やめようね!

君の名前で僕を呼んで

青い空の下、寄り添う二人が印象的なキービジュアルの本作。
画がひたすらに綺麗です。メイン二人の顔も素晴らしい。

内容はというと、夏休みに教授の下へ研究にやって来た大学院生オリヴァーと、教授の息子である高校生のエリオ。二人の交わすひと夏の恋――。

……というと聞こえがいいのですが、なんというか……実際見てみると、

「オリヴァー……こいつ……無、無責任!!!!!!!!!」

という感じがします。

だって……オリヴァーは夏が終われば帰ってしまうことが決定してるんですよ?
ひと夏の戯れで男子高校生を誑かしてやるなや……!! と思います。(主観)

しかも結末がまた……無責任!!!!!

年相応に無垢で、恋愛を心から楽しむエリオに対し、どこか引いた姿勢と本気の姿勢を交互に見せる曖昧なオリヴァー。

こういう時は年上がいい感じにいなしてやれや……と思います。

しかしその分、そこまでオリヴァーを本気にさせてしまったエリオとの恋愛や、夏らしい恋の熱さは見どころですね。

Summer of 85

1985年の夏、セーリング中にヨットで転覆事故を起こした青年アレックスは、たまたまその場に居合わせた好青年・ダヴィドに助けられ、それをきっかけに二人はその仲を深めていきます。

本作は小説『おれの墓で踊れ』を原作とした映画です。こちらのタイトルだけなら聞いたことがあるという方もおられるのでは。

「おれの墓で踊れ」というフレーズは、本作で恋に落ちるアレックスとダヴィドの交わした約束に由来します。
それは、「二人のうちどちらかが先に死んだら、残された方が相手の墓の上で踊る」という一風変わった(というか荒唐無稽な)ものです。

これを言い出したのはダヴィドの方なのですが、こんなことを仲睦まじく接している時に言う時点で、若干破滅的な香りのする青年です。
実際、誰にでも見返りを求めず優しくし、一瞬一瞬を生きるような奔放さが彼の魅力です。
その一方でアレックスは、そんなダヴィドにやきもちを焼いたりと、やや愛情重めなところがあります。

ところでこの作品、原作小説の出だしは「死んだ友人の墓を損壊した罪で逮捕された一人の少年が、どうしてそんなことをしたのかを、手記でもって語る」というものになっています。
ということは、まあ……人が死に……ますね。

文字通り破滅的に、ダヴィドは思わぬ交通事故でその命を落とします。

しかしこの映画、むしろ彼が死んでからが本番。

なかなかスピーディーにあの世へ逝ってしまう彼なのですが、残された方はまるで気持ちの整理がつきません。しょうがない。
そこで、せめてあの約束だけは果たそうと、ダヴィドの墓の上で踊ろうとするアレックスと、ダヴィドを知る様々な人たちのすれ違い、協力、心模様。

彼の死がどのように人々に受け止められていくか、その過程が美しく描かれています。

ひと夏の死と、その傷のかさぶたに重きを置いた作品です。

永遠に僕のもの

天性の美少年であり、また同時に息をするように犯罪を犯す、末恐ろしい少年・カルリートス。天使のような美貌が印象的です。

そんな彼に目を付け、更なる犯罪にいざなうのが、打って変わって荒々しい印象の青年・ラモン。

この二人による、鮮やかで妖しい犯行シーンが本作一番の見どころです。

特に良いのが、宝石店で盗みを働く二人のシーン。
盗んだ宝石を嬉々として身にまとい、鏡を見る二人。まるで「ゲバラカストロ」だというラモンと、「エビータとペロン」だと返すカルリートス。

私は無知故にどの例えも分からなかったのですが、あとで調べてみると、二人の例え方の違いが考え方や行動の違いを反映していて良いセリフです。あと顔が近くて良い。

欲しいものは盗む。邪魔な人間は殺す。何も悪びれず、ずっとそうやって生きていくつもりのカルリートス。
一方ラモンは、大金を手にした暁には犯罪から足を洗おうと考えます。

その差ゆえでしょうか、二人はやがてヘマを犯し、ラモンだけが刑務所に収監されてしまうことに。

次に二人が再会した時、カルリートスはラモンを見捨てた裏切り者扱いで、ラモンは別の相方を見つけていました。
そんなラモンを前に、カルリートスは更なる罪を重ね……。

カルリートスが「永遠に僕のもの」にしたかったのは何なのか。

カルリートスの持つ破滅的で恐れ知らずがゆえの美しさが、映画の最後までふんだんに散りばめられており、思わず彼に魅了されてしまう一作です。

マイ・プライベート・アイダホ

街角で男娼をして日々を暮らす主人公・マイクが自分のルーツを探る物語。

……なのですが、初見でストーリーを理解できるかは微妙。兄だと思っていた人物が実は父親だったりと、複雑な家庭環境がちょっと……わかりにくい……。

また、主人公が持病(ナルコレプシー)のため頻繁に意識を喪失し、場面転換を繰り返すので、なかなかシーンの繋がりが掴めません。

彼の親友であり、共に旅をしてくれる男娼仲間のスコットは、実は良家の生まれで、旅すがらあっさり女性と恋に落ちるや男娼からも足を洗ってしまったり……と、結局マイクは終始取り残され、何者なのかと言われるとわからない……。

強いて言うなら、荒波にただ流されていく青年……という感じでしょうか。

私はなんとなくわからない所はスルーしつつ、フィーリングで見ました。
関係性というよりは、男娼の主人公の刹那的な生き方が見どころなのかもしれない。

わからない……私は雰囲気で映画を見ている……。

キル・ユア・ダーリン

刹那的な恋と革命と文学に満ちた大学生活を送る男子大学生たちのお話。

コロンビア大学に入学するも、文学の教授と授業の方向性が合わないことに不満を覚える主人公・アレン。(ハリポタでおなじみのダニエル・ラドクリフ氏が演じています)

そんなアレンの前に現れたのが、「文学革命」を謳う青年・ルシアンです。

アレンとルシアンは他の仲間たちとも意気投合し、「文学革命」を起こすべく、詩を書き散らしたり、クスリからインスピレーションを得たり、大学図書館をめちゃくちゃに荒らしてみたり……とただれた大学生活を送ります。
ドタバタしていて面白いですが、怖いもの知らずすぎる。

そんな風にして思想を行動に移す過程で、アレンとルシアンの仲も親密に。

しかしルシアンには、どうしてもついてきて離れられない元カレがおり、辟易していることが発覚します。これもまあ……どちらか片方が悪いという訳ではないのですが、只々ただれとる。

その痴情のもつれから、ルシアンは元カレを殺してしまうのですが、ルシアンは「自分は同性愛者の男から肉体関係を迫られ、正当防衛しただけだ」ということをアレンに供述するよう求めてきます。(冒頭のシーン)

それに対し、アレンの出した答えは……。

実在の詩人、アレン・ギンズバーグの学生生活中に起きた殺人事件を映画化した本作。
個性豊かな文学者たちが登場するのも見どころですね。

ムーンライト

貧困地区に暮らす黒人の少年・シャロンの少年期~成年期までの成長を3部に分けて描いた本作。

シングルマザーで売春婦であるシャロンの母は麻薬中毒で、ろくに少年シャロンの世話もしてくれません。またシャロン本人も内気だったため、地元コミュニティではいじめが続きました。

そんな中、唯一友達でいてくれたのが、少年・ケヴィン。彼との友情は成年期までずっと続くことになります。

しかし、青年期を迎えたシャロンは、ケヴィンに抱く自分の思いが特別なものであることを自覚してしまいます。けれどそれを打ち明けることもできない。
一方ケヴィンは彼女を持ち、成年期には家庭を築く『人並みな暮らし』に落ち着いていきます。

印象的なのが、青年期のワンシーン。
夜の砂浜で並んで座り、一本のハッパを二人で吸う場面です。
昔ながらのじゃれ合いをしながら、シャロンとケヴィンはその場限りのキスと自慰に耽ります。しかし、恋愛関係には至らない。若気の至りということで落ち着いてしまう。
けれどシャロンは、その時のことを成年期までずっと大切な思い出として抱えていくのです。

成年期、内気だった青年期とは打って変わって、地元を取り仕切るボスにまで成長したシャロン。体を鍛え、高級車を乗り回す姿に、かつての面影はありません。

シャロンには、かつて自分の母をダメにした麻薬販売人になって生きていくしか道がなかったのです。

そこで不意に再会するシャロンとケヴィン。互いの近況を話しつつ、昔のような親しい会話を交わします。
その時だけ覗く、内気でケヴィンを想う昔のようなシャロンの横顔が美しい。

シャロンの心に秘めた思いが、なんとも切なくエンディングを飾ります。

この映画、海も何度か出てくるのですが、シャロンの浅黒い肌とマイアミの透き通った水の表現がすごく綺麗。

ベニスに死す

いつの時代も推しは尊く、自分たちは触れることも話しかけることも叶わず遠巻きに眺めるしかないが、それは死んでもいいくらいのときめきと喜びをオタクの人生にもたらしてくれる。

そういう心情をありありと描いたのが『ベニスに死す』だと思っています。勝手におま俺映画だと捉えている。

主人公であり作曲家のグスタフは、創作の行き詰まりを感じ、ベニスを訪れます。そこで出会ったのが美少年・タッジオ。(といっても、本当にただ見かけただけ)

同じホテルに滞在するうちに、グスタフはますますタッジオの美貌と佇まいに惹かれ、ついつい目で追ってしまう日々が続きます。

しかしそんなベニスの街にも、いよいよコレラが流行し始めます。

観光客もほとんど立ち去り、路地に消毒薬が撒かれる中、グスタフはなんとか一言この事を忠告しようと、タッジオを追って街を彷徨います。

この時グスタフは、少しでも自分を綺麗に見せようと、白髪を黒に染め、白粉や口紅でメイクしてもらうことで、長らく失っていた若々しさを(精神的に)取り戻しています。

ここもオタク共感ポイントというか、推しのために少しでも見映えを気にして、その上で精神的若さ・元気を得るのって……めっちゃオタク仕草……と思わされますね……。
オタク、100年前から変わっていない。(『ベニスに死す』の原作小説は1912年発表)

しかし、ここでもやはりタッジオに声はかけられないまま。やがて汗で白髪染めの黒い塗料がグスタフの額を伝っていきます。切ない。
それでも、変わらずビーチに繰り出していく水着姿のタッジオを遠目に、グスタフは震える手を伸ばし、息絶える……。

いや、作中で一度はベニスを離れたものの、また戻ってきて案の定死ぬようなグスタフは、きっと傍から見ればめちゃくちゃ愚かな男なのですが、オタクとしてはこう……共感してしまうというか……似たような所はありますよね? ない?

グスタフは、タッジオを追えるだけで終始満足なんです。

またタッジオがほとんど言葉を発さない点も、オタクが推しを崇拝しているみたいでリアルでした。下手に人間くさいより、いっそ天使みたいに浮世離れした存在であって欲しい気持ち……ちょっとわかる。

戦場のメリークリスマス

この映画を見る前の私でさえ、この映画のメインテーマ『戦場のメリークリスマス』は何度も耳にしたことがありました。有名ですよね。
戦時下の極限状態での男男関係性を描いた作品ということで、今更ながら視聴。

(登場人物に本業の役者さんが少ないということもあり、ややセリフが聴き取りづらいのはさておき)
ビートたけし演じるハラ軍曹&捕虜代表の通訳係ロレンスの間に生じる「友情」と、ハラの上官であり日本男児を絵に描いたようなヨノイ大尉殿&そんなヨノイに一目惚れされたがゆえに様々なトラブルの元となるセリアズの「恋慕」という2組の男男関係性を描いた映画。

戦時下の日本軍の捕虜(俘虜)であるロレンス&セリアズと、そんな彼らの生殺与奪の権を握るハラ&ヨノイの間にある身分差、同性愛を恥・自害を美学とする価値観の違い、物語冒頭で語られる男色禁制の状況、そんな中でちらりと明かされるセリアズの過去など……。

しかしこの作品、デヴィッド・ボウイ演じるセリアズが本当にずるい。顔がいい上に、本人がそれを分かっている。自分がヨノイに好かれていると気づいているから、わざと他の捕虜を庇って自分にヘイトを集めている。

終盤、ヨノイ大尉の頬に口づけするセリアズのシーンがあるのですが、その一瞬は時が止まったかのようにセリアズの一挙手一投足がなめらかに表現されていて、本当に美しいの一言に尽きます。
これには彼に惹かれるヨノイの気持ちも分かるというものです。

その後のセリアズの運命と、それに対してヨノイの取った行動、終戦後のハラとロレンスの関わりの変化など、今見ても味わい深い作品です。

マティアス&マキシム

お芝居のキスから始まる男男関係性。

本作は『君の名前で僕を呼んで』などから影響を受けて作られたということもあり、なんというか……ある種、純粋な恋愛映画です。

昔からの友人であるマティアスとマキシムですが、ひょんなことから二人は友達の妹が撮影する自主制作映画でキスシーンを撮られることになってしまいました。
それをきっかけに、マティアスは自分の思いに気づき始め、困惑する。婚約者もいるのに、今更男友達に恋慕を抱くなんて……と、自分でも整理しきれない。

一方のマキシムも、一人にしておけない母を抱えつつ、オーストラリアへ旅立つ準備を進めており、残された時間は短い。
その中で二人は小さな衝突と激情に駆られたキスを交わす……。

というようなお話なのですが、なんていうか……マティアスが困惑のあまり、マキシムが渡豪するのに必要としている書類をわざと渡さない(!?)とかいう、好きな子に意地悪しちゃう男子かよレベルの行いを成人男性がするのでビビります。
マキシムの母も情緒不安定なため、マキシムと離れる上で不安だらけだというのに、書類で困ってる場合じゃないんだよ……。(ちなみにこの母の問題は特に解決せず終わる)

あとマティアス&マキシムを含む男子グループのノリがめちゃくちゃ陽キャで怖い。

ある意味、めちゃくちゃ王道なすれ違い・誤解・ケンカの恋愛ものなんだと思う。私はあまり肌に合わなかったけども……。

ブロマンス映画も見たい!

本筋が別にある作品に含まれる、プラトニックな男男の関係性からしか摂取できない栄養素が……ある!!!!!
探偵と助手のバディものミステリーとかがまさにそうですが、今回はSFとコメディドラマを紹介。

TENET

時間遡行モノのSF映画です。時間遡行の仕組みに関しては……本編を見て下さい!
私にはうまく説明できない。(ちゃんと理解しても若干公式でガバってる所があるらしいし、多少はね?)

とにかく、時間を逆行することで逆回しのビデオみたいに人が動いたり、車が後ろ向きに走ったりします。

そんな逆行を可能にするマシンを駆使して過去と現在、そして未来を巻き込みながら、主人公である名もなき男と、その相方であるニールが世界を救うミッションに挑みます。(といっても主人公は、途中までこれがどんなミッションなのか知らずにいるのですが)

合言葉は「無知は我々最大の武器だ」。未来を知らない方がうまくいく作戦もあるということです。
TENETというのは造語で、これの意味も作中で明かされます。上から読んでも下から読んでもTENET。回文ですね。

ちなみに、足を引っ張らない強ヒロインも出ます。女キャラが自立してて最高。

本作、基本的には素直に面白いハリウッド映画なのですが、最後……最後の一幕で、急に関係性が……来ます……! SFアクションを楽しんでいたら突然脇腹を刺される。
しかもなんか……こう……色々な妄想を掻き立てる余白がたっぷり用意されている! 関係性オタクをスッと殺しに来る。ハリウッドくんも、そういうことするんだね……。

ちなみに吹き替え版は櫻井孝宏氏のニール幸薄ボイスが聴けます。良いです。

最強のふたり

金持ちで偏屈だが首から下が不自由で介護を必要とする男・フィリップと、スラム街出身でノリも教養もまるで違う黒人の青年・ドリスによる、凸凹バディコメディ。

「障害者として扱われる」ことを嫌うフィリップに対し、そんな彼をただの友達のように扱うドリスとの間で次第に育まれる信頼と友情が素晴らしい。
下ネタで盛り上がったり、専門外の相手の趣味に付き合ってみたりと、本当に対等な友達として描かれている。
また、正反対の属性を持つ相手だからこその悩みやトラブルもきちんと描写されている。

私が明るいバディものに求める「こういうのでいいんだよ」的要素が余す所なく詰め込まれており、非常に良かった。万人にオススメできる。

とにかく伏線回収が完璧なのが良い。最初にドリスがフィリップの豪邸を訪れた際、盗んでしまった金細工の卵や、フィリップの文通相手、複雑でトラブルを抱えるドリスの家族たち等々……。
その全てが後々の話に関わってきて、とにかく必要なものしか出てこない美しいつくり。これにはチェーホフもニッコリ。

また見返したいくらいスッキリした名作でした。

終わりに

かれこれ映画を12本見た訳ですが、個人的な感想としては、

>>片方の男が死ぬと……面白い!<<

やっぱり、片割れに死なれると残された側は色々考えたり行動したりしますからね。
話が分かりやすいし、面白くなりやすい。キャラの味も出ます。
これからも色んな男男関係性とその死を看取っていきたいね……✝

男、死んで男の疵になれ。

以上、男男関係性映画10本立て+αでした。

この男が至高! 小説紹介5選

実は絶世の美少年や傾国の男って小説の中にしか実在しなくて……。

文字だからこそ伝わる、ロマンや心の揺れ動きがたまりません!

『青空の卵』坂木司

 人の死なない短編連作ミステリもの。読みやすい上に男男関係性がすごく濃密。
 ひきこもりで探偵の才がある鳥井と、そんな彼と外界を繋ぐ良き友人・助手である坂木の友情が美しい。
 この二人の間には、LoveではなくLikeの最大限が発揮されていると思う。
 事件の先々で出会う人たちとの交流によって、二人の関係が外界に触れていく過程も良い。

『死体埋め部の悔恨と青春』斜線堂有紀

 大学一年生にして望まぬ殺人に加担してしまった主人公・祝部と、そんな彼をなんやかんやあって「秘密裏に死体を処分する闇稼業=死体埋め部」に招き入れる大学の先輩、織賀。繰り返される二人の死体遺棄の結末は?
 大学生が”面倒見のいいヤンチャな先輩”に抱く美しい幻想を全て肯定してくれる織賀と、彼を敬愛し、半ば神聖視すらしている反面、死体埋めに加担することへの罪悪感を募らせていく祝部の揺れ動く心情が見事。

『霊応ゲーム』パトリック・レドモンド

 イギリスの名門男子校で織りなされる、行き過ぎた友情と破滅の物語。群像劇。
 美しく有能な反面、気に入った相手には狂気的なまでの執着を見せるリチャードと、そんなリチャードに憧れて友達になるも、徐々にリチャードを恐れ始めるジョナサンの二人が見どころ。
 同性愛禁止、いじめの告げ口も許されない究極の男性社会の中で、教師から生徒まで様々な想いが交錯する。

『猫道楽』長野まゆみ

 偶然に紹介されたアルバイト先で、大学生のヘテロ主人公がとある家の官能的な男兄弟に誑かされていく話。
 肌が触れそうで触れない……というラインがかえって性的に感じる一作。外で読むと恥ずかしくなる。むしろBL作品ですと言われた方が気が楽なくらい、ひたすらにエロい。

『孤島の鬼』江戸川乱歩

 想い人の女性を殺されたことから、殺人事件の真相を追求する主人公・蓑浦と、そんな蓑浦を愛し、彼の手助けに徹する有能な友人・諸戸。
 都合のよい時ばかり諸戸に頼り、しかし諸戸から向けられる恋慕を決して受け入れることのない蓑浦はひどい人である。諸戸の胸中を思うといつも胸が締め付けられる。だからこそ美しく悲劇的でお気に入りの作品なのだが……。