深海一辺倒

ままならない生活

この男が至高! 小説紹介5選

実は絶世の美少年や傾国の男って小説の中にしか実在しなくて……。

文字だからこそ伝わる、ロマンや心の揺れ動きがたまりません!

『青空の卵』坂木司

 人の死なない短編連作ミステリもの。読みやすい上に男男関係性がすごく濃密。
 ひきこもりで探偵の才がある鳥井と、そんな彼と外界を繋ぐ良き友人・助手である坂木の友情が美しい。
 この二人の間には、LoveではなくLikeの最大限が発揮されていると思う。
 事件の先々で出会う人たちとの交流によって、二人の関係が外界に触れていく過程も良い。

『死体埋め部の悔恨と青春』斜線堂有紀

 大学一年生にして望まぬ殺人に加担してしまった主人公・祝部と、そんな彼をなんやかんやあって「秘密裏に死体を処分する闇稼業=死体埋め部」に招き入れる大学の先輩、織賀。繰り返される二人の死体遺棄の結末は?
 大学生が”面倒見のいいヤンチャな先輩”に抱く美しい幻想を全て肯定してくれる織賀と、彼を敬愛し、半ば神聖視すらしている反面、死体埋めに加担することへの罪悪感を募らせていく祝部の揺れ動く心情が見事。

『霊応ゲーム』パトリック・レドモンド

 イギリスの名門男子校で織りなされる、行き過ぎた友情と破滅の物語。群像劇。
 美しく有能な反面、気に入った相手には狂気的なまでの執着を見せるリチャードと、そんなリチャードに憧れて友達になるも、徐々にリチャードを恐れ始めるジョナサンの二人が見どころ。
 同性愛禁止、いじめの告げ口も許されない究極の男性社会の中で、教師から生徒まで様々な想いが交錯する。

『猫道楽』長野まゆみ

 偶然に紹介されたアルバイト先で、大学生のヘテロ主人公がとある家の官能的な男兄弟に誑かされていく話。
 肌が触れそうで触れない……というラインがかえって性的に感じる一作。外で読むと恥ずかしくなる。むしろBL作品ですと言われた方が気が楽なくらい、ひたすらにエロい。

『孤島の鬼』江戸川乱歩

 想い人の女性を殺されたことから、殺人事件の真相を追求する主人公・蓑浦と、そんな蓑浦を愛し、彼の手助けに徹する有能な友人・諸戸。
 都合のよい時ばかり諸戸に頼り、しかし諸戸から向けられる恋慕を決して受け入れることのない蓑浦はひどい人である。諸戸の胸中を思うといつも胸が締め付けられる。だからこそ美しく悲劇的でお気に入りの作品なのだが……。